天地人 ジャケット

QAZZ — 008

レーベル:QAZZ
企画:石田久二
発売元:まるいひと株式会社

天地人

QAZZ-008

演奏者

Piano阿部 篤志

試聴

収録曲

QAZZレーベル第八弾。2022年3月、福岡・末永ホール(九州交響楽団リハーサル室)でのピアノソロ録音。スタインウェイD-274を擁するホールを借り切り、阿部篤志と少数のギャラリーだけが集まり、約2時間にわたって自由に演奏された記録から9曲を選んだ。タイトル「天地人」は阿部自身からの提案。「天」「地」「人」と題した3つの即興を軸に、スタンダードとオリジナルを配置したアルバム構成となっている。

プロデューサーの石田はホールの真ん中で大の字に寝転がりながら聴き続け、「草原に大の字で朝から夕暮れまで空を見上げていた感じ」と表現した。阿部はこのアルバムについてこう語っている——「人間の魂の音が好き。形式を超える瞬間を知っている。聴いたことある。見たことある」。

「天」の即興はオープニング。霧がかかるような静けさの中でピアノが語り始め、続く「Misty」へとシームレスにつながっていく。阿部が師とも仰ぐビル・エヴァンスの「Waltz for Debby」、マイルス・デイヴィスの「Nardis」も収録。「地」の即興で少し晴れてくる感覚があり、「ANENOH」は阿部のお姉さんの絵にインスパイアされた自作曲だ。「Body and Soul」を阿部は「肉体と精神」と訳し、即興「人」へとつながる必然がある。

「My Favorite Things」はコルトレーンが愛した三拍子の名曲を、阿部は五拍子で演奏する。「耳に引っかかる気持ち悪さが気持ちよい」——その絶妙なバランスがこのアルバムの本質を象徴している。「Hymn #2」は阿部自身の讃美歌で亡くなった祖母へ、そして懸命に生きてきたすべての人へ向けた鎮魂歌にして応援歌。ラストの「Amazing Grace」は今の世界に向けた祈り。

阿部篤志のソロピアノの魅力とは音の「間(ま)」にある。弾かれた音が空間に拡散し、残響が消えていく過程にこそ彼の音楽が宿っている。末永ホールのスタインウェイは鳴りのよいホールの響きと相まってその「間」を最大限に活かす。ソロピアノという究極の孤独の形式の中で、阿部は決してひとりではない。音楽の神と対話している——そんな感覚を聴く者に与える稀有な一枚。ヘッドフォンで深夜にひとりで聴くことをお勧めする。

レーベル:QAZZ
企画:石田久二
発売元:まるいひと株式会社