Mackinこと杉山正明のアレンジと指揮、Qazz-Records主催の石田久二の発案による、2023年10月、ジャズの偉人に捧げるために組まれた総勢50名のフルオーケストラである。その偉人とはモダンジャズの創設者チャーリー・パーカー、スイングの王様ベニー・グッドマン、そしてクラシックとジャズの架け橋を作ったジョージ・ガーシュインである。その頭文字を取ってPGG オーケストラと命名した。
オーケストラのメンバーはクラシックとジャズ、それぞれにおいて常にファーストコールのかかる名演奏家を選りすぐり、日本ジャズ界に旋風を巻き起こすべく、この一夜に集結する。
Qazz-Records主催の石田は、BLUE NOTEの創設者である「アルフレッド・ライオンの日本版」になるべくレーベルを立ち上げ、3年間で11枚のアルバムをリリースしている。アルフレッド・ライオンは1939年、ニューヨークのカーネギーホールにて開催された「From Spiritual to Swing」というコンサートに感銘を受け、BLUE NOTEを設立し、そこから多くのジャズの巨人を輩出した。
このコンサートもFrom Spiritual to Swingの精神を受け継ぎ、まさに伝説となる一幕を再現する。第一部はアルトサックスをメインにピアノトリオ、弦楽オーケストラに木管五重奏団を加え、よりクラシカルな雰囲気をバックにパーカーへのトリビュート。第二部はさらにブラスセクションが加わり、ゴージャスなビッグバンド編成でグッドマンとガーシュインをお届けする。フルオーケストラながらも、即興の精神を重視しつつ、かのヘルベルト・フォン・カラヤンが驚愕したザ・シンフォニーホールにて、偉大なる3人の巨人が蘇る。
名盤『Charlie Parker with Strings』にちなんだプログラムであり、同盤からはJust FriendsとEverything Happens to meを取り上げる。オリジナル編成はストリングスにオーボエであるが、今回は木管五重奏を従え、豊かな色彩を加えた。All the things you areとEmbraceable Youはストリングスにはない選曲であるが、いずれもParkerがスタンダード化した名演が残される。ParkerのBluesは数多あるが、その代表ナンバーをストリングスのアレンジでお届けしたい。
アルトサックスの江澤茜は東京都内を中心に、いまや若手や女子などを冠する必要のない実力派として活躍している。自己のリーダーアルバムに加えQazz-Recordsでは豊秀彩華『それから』において大きくフィーチャーされている。
日本におけるモダンクラリネットの第一人者である土井徳浩をメインにGoodmanのナンバーを。ゆかりの曲は数多くあるが、吹奏楽でもお馴染みのSing, Sing, Singは外せないだろう。クラリネットだけでなく、トランペットやドラムのソロも聴かせどころ。Memories of YouもGoodmanの影響からかクラリネット奏者に愛奏されるが、イントロもお馴染みだ。お馴染みと言えばアップテンポのAvalonのアウトロも印象的であり、今回は「東の土井徳浩」に対する、「西の鈴木孝紀」とのバトルでお届けしたい。
土井徳浩はQazz-Recordsにおいて完全ソロの『ひとりごと』を吹き込んでいる。スイングからフリーまで表現の幅は広く、クラリネットでモダンを吹かせたら右に出るものはいない。
CMやアニメ『のだめカンタービレ』でも広く知られるようになったRhapsody In Blueは、しばしばジャズとクラシックの融合と言われる。Rhapsody(狂詩曲)とは様々なメロディを寄せ集め、自由に繋げた、ある意味何でもあり形式に基づく。
ここで聴かれるメロディはBluesを基調に、アメリカの魂そのものである。冒頭のクラリネットから、ブラスの迫力を効かせた中間部と、抒情的な弦の響き。自由闊達なピアノソロを挟み、終盤に向けてクライマックスを迎える。
ピアノの阿部篤志はほぼ独学で楽器をマスターした天才肌であり、国内外の著名なミュージシャンとの共演も多く、その枠はジャズにはおさまらない。阿部にとってRhapsody In Blueは初挑戦ではないが、今回のオーケストラには超ド級のブラスセクションが揃い、よりジャジーなRhapsodyが繰り広げられるだろう。Qazz-Recordsではソロからスタジオからライブから最多の吹き込みがある。